感染症が不妊の原因に!?
感染症と不妊治療
もくじ
最近は新型コロナウィルスで大変な時期ですが、性感染症は不妊治療を受ける上で知っておかないといけない知識だと思います。
不妊の原因になる感染症不妊症の原因になると言われている感染症には、クラミジア感染症と淋菌感染症があります。
ウィルスとは違い、双方とも細菌感染によって引き起こされる病気です。
症状は似ている為重複するところもありますが、今回はクラミジア、淋菌について、個々に説明していきたいと思います。

クラミジア感染症
クラミジア感染症とは、クラミジア・トラコマチスという細菌により引き起こされる性感染症のひとつです。
この細菌は主に目と性器に感染します。
性器に感染した場合、性器クラミジア感染症と呼びます。
これは正式病名で、一般的にはクラミジアと認識されているかと思います。
感染すると、ウィルスのように宿主(感染した人)の細胞に入って増殖します。
殻に入った状態の為に免疫細胞からの攻撃から逃れ、軽度な炎症で自覚症状が強く出ない、もしくは無症候性であることが多いとされています。
女性の場合は子宮頸管が主な感染場所で、上行性に感染を広げ、子宮内膜、卵管、骨盤内に侵入炎症を起こすこともあります。
男性の場合は、主に尿道が感染場所で、頻度は高くはないですが、精巣内で炎症を起こすこともあります。
近年では男女ともに咽頭(のど)へのクラミジア感染が見られることが増えています。
オーラルでの性交が昔に比べて増えているからと考えられています。
こちらも、症状がなく見た目の変化も見られない為見落としがちです。
クラミジア感染による子宮頸管炎
症状として、おりものの増加、性交痛、排尿痛、下腹部痛などがあるものの、前述したように無症候性感染が多いとされています。
女性の場合70~80%が無症状だと言われています。
その為、気付いた時には卵管炎や骨盤内炎症を起こしている場合があります。
クラミジア感染症による不妊子宮頸管炎症になった場合、頸管粘液不全によって精子が子宮頸管を通過できないことによって、不妊の原因になりかねません。
子宮頸管炎から、上行性に感染が広がり、子宮内膜炎を起こすと、受精卵の着床の妨げにもなります。
さらに、卵管炎を起こすと、卵管狭窄を生じ、子宮外妊娠の原因や精子が通過できなかったりと、不妊症になりかねない感染症です。
さらに進行すると、腹膜炎を起こして、子宮や卵管、卵巣が周囲と癒着してしまう可能性もあります。
癒着によって子宮の機能(動き)が妨げられることから、妊娠しくい状態になりかねません。
男性のクラミジア感染
尿道に感染し、尿道炎を起こすと、3週間以内で軽度の排尿痛、かゆみ、排尿時に膿が出たりしますが、全例でこのような症状が出るわけでなく、
およそ50%の人は全く症状が出ないと言われています。
感染を起こして放置していると、女性同様に上行性に感染が広がり、精巣上体炎を発症し、男性不妊症の原因になることがあります。
前述したように頻度は高くなく、約5%ほどだと言われています。
クラミジア感染症の治療
基本的に除菌になります。
標準治療は、マクロライド系、テトラサイクリン系、フルオロキノロン系抗菌薬を血液検査や尿検査の結果から選択し、治療が開始されます。
治療で大切なのは、パートナーも検査や治療を必ず一緒に受けないといけません。
どちらかが治療して治したとしても、パートナーからまた感染してしまう為、同時治療することがひつようです。クラミジアの治療がおわっても、感染症によって引き起こされた卵管狭窄、癒着などは改善されない為、不妊治療が必要な場合があります。
淋菌感染症
淋菌感染症とは淋菌という細菌から引き起こされる性感染症です。
クラミジア感染症と同様に主に性器に感染し炎症を起こして、咽頭にも感染し、咽頭炎を起こしていることも多いのが特徴です。
淋菌がついた手指で目を触ることで、目にも感染します。
女性の場合、淋菌感染症も症状がない場合が多いですが、男性の場合クラミジア感染症と違い、症状が強く出ます。
淋菌感染症による子宮頸管炎淋菌感染症はクラミジアに次いで多く見られる感染症です。
主に性交渉により感染するのですが、クラミジア感染症と同様な症状で自覚症状がない場合が多く、気づいた時には子宮内膜、卵管、骨盤腔内の感染を引き起こしている場合があります。
淋菌感染症による不妊
クラミジア感染症と同じで子宮頸管炎症になった場合、頸管粘液不全によって精子が子宮頸管を通過できないことによって、不妊の原因になりかねません。子宮内膜炎によって、受精卵が着床しづらくなったりします。
さらに、卵管炎を起こすと、卵管狭窄を生じ、卵子と精子がうまく出会えない、受精したとしても、子宮内膜にたどり着けず、子宮外妊娠の原因になったりなど不妊症になりかねない感染症です。
卵巣炎をさらに進行すると、腹膜炎を起こして、子宮や卵管、卵巣が周囲と癒着してしまう可能性もあります。
癒着を起こすと、子宮の機能が上手く働かず不妊症の原因になってしまいます。
男性の淋菌感染症
男性は感染してから、2日〜7日潜伏期間を経て、排尿痛とともに、尿道から分泌物が出てくることがあります。
症状が強いと、亀頭部、尿道口が赤く腫れたりすることもあります。
男性の感染者の5%は症状のない人もいますが、排尿痛などの症状がある人がほとんどです。
進行すると尿道から淋菌が、精子の通り道になっている、精管を逆流し精巣上体に感染、炎症を起こして、男性不妊の原因になってしまいます。
淋菌感染症の治療
治療にはセフトリアキソン、セフォジジム、スペクチノマイシンという抗菌薬が処方されます。
近年では抗菌薬に対する耐性を持つ淋菌が増加傾向にあります。
途中で抗菌薬を中断してしまうと、抗菌薬に対し耐性を持つなってしまいます。
このようにならないためにも、医師に処方された抗菌薬を所定期間、服用する必要があります。
クラミジアと同様に、必ずパートナーと一緒に治療を受けないといけません。
まとめ
性感染症の中で一番多く見られるのはクラミジアで、次に多いのは淋菌です。
クラミジアは約年間2万5000人、淋菌は約8100人報告されていますが、前述したように、氷山の一角にすぎません。
梅毒は全て医療機関で報告義務がありますが、それ以外は指定の医療機関のみの報告義務で全てを把握できていません。
また、これらの感染症は無症状なことが多く、知らないうちに感染が悪化していることもあります。
男女ともに不妊の原因になる可能性があるため、注意が必要です。

厚生労働省 性感染症報告数
厚生労働省ホームページ
これらの感染症の予防としては、コンドームが有効とされていますが、妊活していらっしゃるカップルの方は使いませんよね。
例えば、パートナー以外にも性交渉をする相手がいる方は、コンドームを着用し、オーラルセックスは避けて下さい。
不妊治療を受けられる方は、病院で必ず検査を行うと思います。
まだご自身で妊活をされている方は、産婦人科でのスクリーニング検査をお勧めいたします。
表にあるように、性器ヘルペスも罹患率の多い性感染症です。
最近では、不妊に関係あるのでないかと、研究が進められています。
放っておくと、後悔しかねない感染症、自分自身、パートナー、赤ちゃんの為にもしっかりとした知識を持ち、予防したいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。