人工授精(IUI・AIH)とは

人工授精はどんな人がするの?どんな方法?

人工授精とは

排卵時期に妊娠を引起こす目的で、人工的に女性の性管内(子宮内、子宮頸管など)に注入器で洗浄、濃縮した精液を注入し、自然受精を期待する方法です。
子宮頸管を通らないため、精子が卵管膨大部に到達しやすいと考えられています。

人工授精は使う精子によって呼び方が変わります。
夫婦間で夫の精子を使うのが、配偶者間人工授精AIH
配偶者でないパートナー又は精子提供者の精子を使うのが、非配偶者間人工授精AID
とよばれます。
病院ではよくAIHと呼ばれますが、配偶者間人工授精の略号です。

最近では婚姻の多様化などから、上記の呼び方ではなく、子宮内人工授精Intrauterine Insemination)その略号である「IUI」が一般的になってきているといわれています。
確かに、近年では色んなパートナー形があるので、精子の提供者によって名前が変えるのは、時代遅れかもしれません。

また、上記に性管内に精液を注入とありますが、一般的なのは子宮内に精子を注入する方法です。
あまり一般的ではないですが、他にも種類があるので紹介しておきます。

  • 子宮内人工授精(IUI)
  • 子宮頸管内人工授精(ICI)
  • 卵管内人工授精(FSP)
  • 腹腔内人工授精(DIPI)

人工授精の適応

日本産婦人科学会の産婦人科診療ガイドラインによる人工授精の適応は以下のようになっています。

  1. 精子、精液の量的・質的異常
    1)乏精子症(精子濃度15×100万/mL未満)
    2)精子無力症(精子運動率40%未満)
    3)乏精液症(性液量1mL未満)
  2. 射精障害
    1)逆行性射精
    2)勃起不全(ED)
  3. 性交障害
    1)強度の膣狭窄
    2)膣痙攣
    3)陰茎の変形
  4. 精子-頸管粘液の不適合
    1)抗精子抗体陽性
    2)頸管粘液分泌不全
  5. 原因不明(機能性)不妊

産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編

産婦人科診療ガイドラインー婦人科外来編2017(日本産婦人科学会)

では、一つ一つ詳しく説明していきます。

1.精子・精液の量的、質的異常

精液検査の正常値(WHOによる正常下限値)

  • 性液量   1.5ml以上
  • 精液濃度     1500万/ml以上
  • 運動率   40%以上
  • 総精子数   3900万以上
  • 正常形態率  4%以上

精液検査で2回以上この基準を満たしてない場合はタイミング法ではなく人工授精を検討します。
日本産婦人科学会のガイドラインでは
1)乏精子症(精子濃度15×100万/mL未満)
2)精子無力症(精子運動率40%未満)
3)乏精液症(性液量1mL未満)が人工授精の適応とされます。
また、人工授精が有効な総運動精子数は10×100万個以上とされ、これより少ない場合は、顕微受精による不妊治療が検討されます。

2.射精障害

1)逆行性射精
正常なら射精時に閉じているはずの膀胱の一部が開いたままになり、精液が膀胱に逆流します。
主な原因として、損傷、骨盤内悪性腫瘍術後(直腸がん、前立腺がん)などがあります。
逆流してしまうので射精する性液の量が少なくなります。
2)勃起不全(ED)
心理的なストレス、精神的な問題などで性交ができなくなると、タイミング法ができないので、人工授精が検討されます。
1).2)ともに、マスターベーションによる射精が可能な場合に適応されます。

3.性交障害

女性側、男性共に性交時の痛みや、精神的な問題(性交に対する不安感や嫌悪感、トラウマ)などから性交ができない状態の事をいい、こちらもマスターベーションで射精が可能な場合に適応になります。

4.精子ー頸管粘液の不適合

抗精子抗体が陽性、フーナテストの結果などから、頸管から子宮内に精子が侵入することが難しい場合適応になります。
また、頸管粘液分泌不全の場合も、精子が頸管粘液が少ないと、うまく精子が子宮内に侵入できないため適応になります。

5.原因不明(機能的)不妊症

一般的な不妊検査で異常がなく、タイミング法を行っても妊娠にいたらない場合、体外受精や顕微受精の前段階で人工授精を行うことがあります。原因不明の中には、卵子のピックアップ障害受精障害などが隠れている事があります。
その場合、人工授精は有効ではないと考えられます。

人工授精の方法

排卵時期に精子を採取し調整、細いチューブ(カテーテル)を子宮内に挿入し調整した精子を注入します。


精子の調整の仕方には遠心洗浄法、密度勾配遠心法、スイムアップ法、スイムダウン法があります。
スイムアップ法、スイムダウン法は処理時間がかかるため、病院の方針によりますが、密度勾配遠心法が一般的と言えます。
洗浄をする目的として、病原体や精子以外の細胞成分の除去、精子の濃縮があります。
人工授精の成績向上の為には良好精子(元気のいい精子)を子宮内に注入する必要があるため、濃縮、洗浄した精液が使用されます。

人工授精のスケジュール

自然周期による人工授精

  1. 月経周期10〜12日目
    超音波検査で卵胞の大きさを確認、人工授精日を決めます。
    排卵を促す為、hCG注射を使うことがあります。
  2. 月経周期12〜14日目
    人工授精当日、精液を準備して、調整し子宮内に注入する。
    注入してからしばらくは安静にしますが、病院によって時間は様々です。
    ガイドラインによると、10〜15分間安静にするとあります。
  3. 人工授精の翌日〜2日後
    排卵と黄体機能の確認をし、黄体機能の低下がある場合(血液検査の結果)は、黄体ホルモンの内服や注射をします。
    病院によっては、必ず黄体ホルモン内服を行うところもあります。

排卵誘発剤を併用した人工授精

  1. 月経周期5日目~
    クロミフェンなどの内服薬開始し、卵胞が育ちにくい場合は注射薬を使用する場合があります。
    ホルモン値の確認のため、採血検査をする病院が多いと思います。
  2. 月経周期10〜12日目
    超音波検査で卵胞の大きさを確認をし、排卵日を予測します。
  3. 月経周期12~13日目
    hCG注射もしくは点鼻薬を用いてLHサージを起こさせ、約36時間後に排卵するようにします。
  4. 人工授精当日
    精液を準備して、調整し子宮内に注入する。注入してからしばらくは安静にしますが、病院によって時間は様々です。ガイドラインによると、10〜15分間安静にするとあります。
  5. 人工授精の翌日〜2日後
    排卵と黄体機能の確認をし、黄体機能の低下がある場合(血液検査の結果)は、黄体ホルモンの内服や注射をします。
    病院によっては、必ず黄体ホルモン内服を行うところもあります。

人工授精の回数

タイミング法と同様におよそ6回人工授精を行っても妊娠に至らない場合には体外受精が検討されます。
しかし、年齢的、タイミング法の回数などの考慮しながら、流動的に考えるべきで、不妊治療を受ける側の方の意向を重視するべきと考えます。

人工授精のリスク

  • 排卵誘発剤による卵巣過剰刺激症候群
    排卵誘発剤による刺激で、多数の卵胞が発育したため、卵巣が腫れてしまい、中には腹水が起こる場合もあります。
  • 出血
    子宮内に精液を注入する際、カテーテルの挿入により出血する場合があります。
  • 感染
    子宮や卵管、腹腔内に感染を起こしてしまう場合があります。
  • 多胎妊娠
    排卵誘発剤を併用した場合、卵子が複数でき、多胎妊娠の可能性があります。

人工授精の費用

薬の使用や血液検査で費用は変わりますが、平均的に2~3万円前後かかります。
保険適応ではないため、自費診療となります。

まとめ

詳しくわけて書きましたが、治療の適応、スケジュールが分かれば、先生からの説明も分かりやすいのではないかと思います。
人工授精は自費ではありますが、体外受精よりもはるかに安価で受けられる治療です。
ご自分の身体や気持ちを大切に、回数にこだわらずご自分の考えを相談して見てください。
きっと、自分ならではの治療が受けられるはずです。

治療はつづけていると、結果に一喜一憂しがちですが、妊娠した後の事も考えて、体力づくりをされると気持ちもゆったりできるのではないでしょうか。
今後は治療や知識だけでなく、運動のことは体づくりのことも記事にしていこうと思っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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