排卵誘発法とはどんな治療?

排卵誘発法

排卵誘発法とは

各種の月経異常や不妊の原因となっている無排卵症に対して、排卵を誘発する目的で行われる治療法です。
無排卵の原因になっているのは、視床下部、下垂体、卵巣系のそれぞれの障害がある場合のほか、甲状腺などの内分泌腺の機能障害や心因性(ストレス)過度のダイエットによる全身性の消耗、代謝異常などが原因にあげられます。
まずは無排卵となっている原因を特定して、それに向けての治療が行われます。

また、不妊治療を受けている場合、タイミング法、人工授精を併用として排卵誘発剤が使用される場合もあります。
これは、タイミング法などで妊娠に至らない場合のステップアップとして選択されています。
そして、体外受精、顕微受精の為の採卵の為に使用します。

排卵障害の分類では排卵障害がある場合の薬剤選択は、WHOの排卵障害の分類を参考に行われます。

障害部位により以下のようにGroup分類を行う.
・Group1:視床下部・下垂体機能不全〔E2低値、LH・FSH低値〕
・Group2:視床下部・下垂体性機能異常〔E2正常範囲、LH・FSHほぼ正常値〕
・Group3:卵巣機能不全〔E2低値、LH・FSH高値〕


無排卵の原因については、こちらの記事を参照してくだい。
不妊の原因〜女性側の問題〜

排卵誘発剤の種類

それでは、排卵誘発剤の種類と、どのような働きをするのかひとつずつ見ていきたいと思います。

ラッキーエースさんによるACの写真

1)クロミフェンおよびシクロフェニル

下垂体より放出される卵巣を刺激するホルモン、黄体ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を促進して卵巣を刺激します。
具体的な作用はエストロゲンの働きを抑えることで、下垂体からのホルモンを出させます。
下垂体からのホルモンが増えることにより、卵胞発育を促します。

クロミフェンの商品名

有名なのが、クロミッド、セロフェンなどです。
副作用としては、子宮内膜が薄くなったり、頸管粘液が少なくなる報告があります。

セロフェンの商品名

セキソビットなどです。
作用などはクロミフェンと変わりませんが、クロミフェンよりもよりも排卵誘発効果が弱いと言われています。
頸管粘液、内膜への影響は少ないと言われています。

2)ゴナドトロピン注射薬

であるゴナドトロピン製剤は下垂体から放出されるホルモンそのものです。
ゴナドトロピン製剤は閉経後の尿由来の製剤です。
閉経期の女性は卵巣機能の低下に伴い下垂体からのLH・FSHは上昇しています。
これらのホルモンは尿中に多く排出されるため、この尿からLH・FSH成分を抽出精製した製剤がhMG(ヒト閉経期ゴナドトロピン)製剤です。
hMG製剤には、LH・FSH成分の比率で呼び方が変わります。
LH成分を比較的多く含むものの総称がhMG製剤とよび、LH成分を含まないものがFSH製剤と呼ばれます。
また、ヒトの尿を原料とせず、遺伝子組み換えによって製造されたものがあり、それはリコンビナントFSH製剤(rFSH製剤)と呼ばれ、不純物を含まず、品質が安定しています。
商品名は下の表を参照してください。

3)高プロラクチン性排卵障害に使用するドーパミン作動薬

脳下垂体にあるドーパミン受容体を刺激することにより、プロラクチンの過剰分泌を抑えます。
薬品名として、ブロモクリプチン、テルグリド、カルベゴリンなどがあります。
内服により高い確率で排卵すると言われています。

排卵をコントロールする薬

GnRHアゴニストGnRHアンタゴニスト

GnRHとは視床下部分泌されるホルモンで、性腺刺激ホルモン放出ホルモンと呼ばれ、脳下垂体から分泌されるLH・FSHを出させるホルモンです。
そのGnRHと同じ働きを持つのがGnRHアゴニストと呼ばれ、本来のGnRHよりも強い作用があります。
反対にGnRHの働きを阻害するものをGnRHアンタゴニストと呼ばれています。
ではなぜこれらの薬品が排卵を抑制するのかを説明します。

GnRHアゴニストを投与した時、一時的に卵巣からのLH・FSHの分泌量は増えますが、フィードバックにより、身体はそのホルモン量を抑えるようと働く為、LHサージが起こらず、排卵を抑えます。
GnRHアンタゴニストは働きを阻害する為に、LHサージを抑え排卵しないように働かせます。

女性ホルモン

体外受精の採卵のため、排卵を抑えながら卵胞の発育が必要になるため、これらの薬品が使われます。

GnRH製剤の薬品名

GnRHアゴニスト点鼻薬のスプレキュアやブセレキュアなどがよく使われます。
皮下注のリュープリンを使う場合もあります。

GnRHアンタゴニスト

セトロタイドやガレニストがあります。

排卵誘発剤の具体的な使用方法

排卵誘発剤を使用し、卵胞を育てる方法はいくつかあります。
年齢や血液検査やご本人のスケジュール、男性因子があるかどうかで方法が変わります。
低刺激法と刺激法に分けられていいますので、それぞれ説明していきます。

低刺激法

a.内服薬のみの刺激

上記1)で説明したクロミフェンやシクロフェニルの内服薬のみで卵巣を刺激して、卵胞発育を促します。
体外受精だけではなく、タイミング法や人工授精とも併用されます。
平均的には2個程度の採卵になります。

b.内服薬プラス排卵誘発剤の刺激

クロミッドなどの内服に加えて、排卵誘発剤の注射も数回して卵胞発育を促す方法です。
内服だけの使用よりも採卵数が増えるほか、卵巣過剰刺激症候群の副作用が回避できると言われています。
他にもレトロゾール法などありますが一般的ではありません。

刺激法

上記2)で説明した、排卵誘発剤を月経周期3日目から毎日注射しながら卵巣を刺激し、卵胞をたくさん育てますが、それに伴い排卵も早くなってしまいます。
その排卵を抑える為にGnRHアゴニスト、または、GnRHアンタゴニストを使用します。
数多くの卵胞が育てられますが、副作用としては、卵巣過剰刺激症候群があります。

アゴニスト法

GnRHアゴニストの点鼻薬を採卵周期の前周期高温期の中間あたりから開始するのを、
ロング法と呼びます。

採卵周期の月経がはじまってから開始するのを
ショート法と呼びます。

子宮内膜症など着床環境を整える為に、採卵周期の4〜6ヶ月前より点鼻薬をはじめ、数ヶ月間、完全に下垂体ホルモンを抑制し排卵誘発剤を開始するのを
ウルトラロング法と呼ばれます。

アンタゴニスト法(hMGセトロ法)

GnRHアンタゴニスト(セトロタイド)を使う場合は排卵誘発剤の注射を開始して、卵胞がある程度大きくなったあたりから、排卵誘発剤と併用し、注射していきます。

hMG-MPA法

排卵誘発剤とMPA(黄体ホルモン剤)を併せて使う方法で、アゴニスト法やアンタゴニスト法よりも安価で行えると言われています。
排卵誘発時に併用すると自然排卵が抑制されることがわかり取り入れられるようになりました。
黄体ホルモンを使用するので、内膜がうすくなるため、新鮮杯は移植できません。
また、採卵前に自然排卵する可能性もあります。

まとめ

たくさんの刺激法が出てきました。
刺激法では、卵胞がたくさんでき採卵数が増えることでチャンスも増えるメリットもありますが、予備機能が低い場合などは、刺激法ではかえって卵胞発育が悪くなる可能性があります。
注射を打つために病院に通うのが頻回だったり、卵巣過剰刺激症候群などのデメリットもあります。
低刺激は身体の負担は少ないですが、採卵数が少なかったりします。
主治医はその人にあった排卵刺激の方法を、採血結果やこれまでの過程なので決めてくれています。

今回は排卵誘発法の具体的な方法を説明しましたが、別記事で体外受精、顕微受精の方法をこの記事も踏まえて、くわしく説明したいと思います。

なんで私は低刺激しかしないんだろう?
刺激法は身体に悪くないんだろうか?

など、感じたことはありませんか?
排卵誘発法の仕組みを知っていれば、主治医にも聞きやすいのではないでしょうか。

この記事がお役に立てることを願って…最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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